弐)消えた<火の鳥>

GM:依頼人の寺田さんには何点か質問が出来るよ。積極的に情報収集しておくれ。
乾月:では積極的に探偵が聞くとしてだ(苦笑)。
朔耶:列車が消えなくて乗客が失踪…ねえ。
十六夜:最初は列車ごと乗客が消えた。
 そして最近は、列車は待避線と云う所に存在するも 中に入った乗客が消える。

乾月:そう言えば、最近<火の鳥>を見たと証言した運転士が居たって言ってたよね?
朔耶:その、運転手を探しますか?
GM(寺田営業部長):「目撃した運転士ですか? 山本と云う男でして、大阪機関区で働いています。
 大阪駅に行けば会えると思います」
朔耶:その、証言した運転手ってやつを、探して聞いてみるか…。
乾月:寺田営業部長に手筈を整えてもらえば良いじゃない。
 山本って名字だけで我々が捜しに行くのは無謀だよ(苦笑)。

朔耶:そうか。山本ってどこにでもいる苗字だし、俺達で探すの大変だなあ…(苦笑)。
十六夜:如何にして乗客が消えて行ったのか、御存知ですかな?。
GM(寺田営業部長):「突然失踪した乗客の出た列車の車掌や、周りにいた乗客によると…
 気が付くと姿が見えなくなっていたらしいです。
 その時、一瞬、霧の様な物を見たという人も居ますが…此方も詳しい事は判っていません」
朔耶:まるで、神隠しだな。
十六夜:神隠しに遭ったか雲隠れしたか、という認識で宜しいのかな?
GM(寺田営業部長):「証言を聞く限りでしたら、そうではないかと…。断言は出来ませんが」
十六夜:そもそも<火の鳥>がどのような乗り物か、私は見た事が無いのぅ……。
乾月:朔耶。<火の鳥>って確か特別な列車じゃなかったっけ?
 お前、以前 寿星とそんな話して無かった?

朔耶:ああ、確か 豪華列車みたいでさ、『俺達も一度乗ってみたいなあ(笑)』って話してた。
十六夜:では、滅多に走らぬのか?それだと調査の仕様が無いのでは?。
朔耶:そんなことはないよ。よく走ってる。
乾月:十六夜の云う事も一理あるぞ。私も<火の鳥>の運行状況は知らないからね。
朔耶:うーん、俺には説明難しいから、寺田さんに説明してもらった方が良いと思う(苦笑)。
乾月:聡明な考えだな。では寺田さん、<火の鳥>ついて教えて頂けますか?
 どういう列車で、どういう運行状況だったのか。

GM(寺田営業部長):「判りました。<火の鳥>は最新式のディーゼル機関車を使用した
 我が社の誇る急行列車です。いや、今となっては「でした」と言うのが正しいですね。
 同時に<水の鳥>という急行列車も走らせていましたが、
 これは<火の鳥>が東京へ向かう時の名前で、車両は全て同じです。
 火曜日、木曜日、土曜日が東京行きの<水の鳥>で、
 月曜日、水曜日、金曜日が大阪行きの<火の鳥>になります」
十六夜:朔耶の申す通りじゃったな。よく走っておる…。
朔耶:だろ、毎日走ってる列車って事になる。
乾月:と、なると大阪行きは決定事項だね。寿星と鳴神を誘っておくか。
十六夜:「待て、もう一つ質問が有る」と言いながら、読んでた新聞をゴソゴソと。
朔耶:えっ? 何?
十六夜:これは今日の新聞じゃ。乗客失踪事件の賠償請求以外にも問題を抱えておる様じゃが…。
朔耶:そうなのか?十六夜。他にってどんな問題?。
GM:十六夜の質問に対して、寺田さんは顔を嫌そうに顰めた。どうやら心当たりが有る様だ。
十六夜:労働組合の方から何やら文句を言われているとかでな。
 職場内もかなり荒れておるそうじゃが、それも失踪事件の影響かのぅ。

GM(寺田営業部長):「…新聞に載ってしまいましたか」
朔耶:労働組合?寺田さん、一体何が遭ったんですか?
GM(寺田営業部長):「お恥ずかしい話です。確かに、労働者組合の方から
 賃金の値上げ要求をされております。
 しかしながら今は事件の影響で収入がガタ落ちしてますんで、
 社としても応じようが無いんですよ…」
朔耶:確かに、この状況じゃ、払えないよな。
乾月:「会社の売り上げが無ければ支払うべき賃金を確保出来ない…か。
 今回の件で賃上げ要求も棚上げされてるって事だね。

十六夜:私の質問は以上じゃ。
乾月:どうする、朔耶? 依頼を受けてみるかい?
朔耶:うーん、大体理解は出来た…。取り敢えず、(依頼を)受けてみますか。
十六夜:異存は無い。
朔耶:師匠は?
乾月:同じく。
朔耶:では、依頼は受けましょう、寺田さん。
GM(寺田営業部長):「あぁ、受けて下さいますか! 有難う御座います!
 我が社として協力出来る事は何なりと申し付けて下さい」

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SITE UP・2015.01.24 ©森本 樹



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