切り裂き事件が有ったと云う地点に顔を出すと
其処で繊と神楽の二人組に鉢合わせした。
彼女達も姿無き切り裂き魔を追い駆けているのだ。
「アンタ達、何か判ったの?」
「私達も犯人の行方を追っているのですが…」
「繊。【陽炎丸】に反応は?」
「? 何故、【陽炎丸】?」
「犯人は…【妖刀】の可能性が高い」
「【妖刀】? 【妖刀遣い】ではなくて?」
「あぁ…。十六夜が言うにはな」
「十六夜って誰?」
「俺ん家の居候…兼、そう云う情報に詳しい奴」
「同業者?」
「みたいなモンかな?」
「ふ〜ん。で、つまりどう云う事なんだ? 詳しく説明してくれない?」
「この街には今、4本の【妖刀】が存在する。
持ち主は繊、お前の他に十六夜、鳴神、そして俺の師匠…乾月さんだ」
「今回の事件の黒幕は未契約状態の【妖刀】…と云う事ですか?」
「多分な。十六夜の発言から考えれば」
繊は話を聞きながら傍らの【陽炎丸】を強く握り締めていた。
「【陽炎丸】の反応で居場所が判るかも知れない。
やるだけの価値は有ると思う」
「繊。良いのか?」
「アンタ達には貸しが有るからな。でも、これでチャラだけど」
「はは、そうだな」
今回も何とか共同戦線を張れそうだ。
思ったよりも繊が素直に従ってくれた事で朔耶は少し光明が見出せた。
* * * * * *
激しく鳴り響く金属音。
姿は見えずともこの刀を振るう存在が居る。
恐ろしく凄腕の剣士。
「くっ!!」
先程から圧されっぱなしで劣勢のまま
鳴神は一撃必殺のタイミングを計っていた。
チャンスがあれば雷撃攻撃で
剣士の動きを止めようと狙っているのだ。
しかし。
『どうした? お前の腕はその程度か?』
姿無き剣士は疲労している様に見えない。
相対した時と全く変わらぬ口調。
『口程にも無い。
【村正】が認めたと言うから楽しみにしていたが』
「…るせぇ」
一瞬の隙。鳴神はそれを見逃さなかった。
「NamaH samanta-buddhAnAM indrAya svAhA
(ナウマク サマンダ ボダナン インダラヤ ソワカ)!!」
素早く帝釈天呪を唱え、雷を呼び起こす。
姿は見えずとも目の前の【妖刀】目掛けて雷を落とせば
多少のダメージは与えられる筈だ。
鳴神の狙い通り、雷は真っ直ぐに【妖刀】を直撃した。
「これでどう…っ?!」
鳴神は我が目を疑った。
【妖刀】は青白い色の光に包まれたまま
落雷を完全に遮断していた。
「結界…だと?」
『私に術は通用しない…』
「クソッタレが…っ!!」
『未熟な我が身を呪うんだな』
【妖刀】はそのまま一閃の攻撃を放つ。
あまりの勢いに鳴神は吹き飛ばされ
壁に強か体を打ちつけてしまった。
「グハッ!!」
『生命迄は奪わずにいてやろう。それなりには楽しめた』
勝ち誇る姿無き剣士に鳴神は なす術も無く
やがて気を失った。 |