どの位長い時間、互いを貪り合っているのだろう?
半覚醒した十六夜に真面な説明もしないまま
激しく交わり続けている。
抵抗は無い。肯定するかの様に十六夜も強く求める。
此処が何処で、俺達がどの時代に居るのかも
錯覚してしまう位、もう互いしか見えていない。
乱れた呼吸の合間に微かに届く十六夜の声。
其処には安堵の色が見えた。
もう二度と放す事は無い。
互いの、この腕を。
* * * * * *
「鳴神。今、朔耶から連絡が入った」
乾月が縁側に姿を現した。
背を向けたまま、鳴神は小さく頷く。
「明日、蓮杖神社に集まって欲しいそうだ」
「其処で答え合わせって事かい?」
「あぁ。そう解釈しても良い」
「いよいよだな」
「そうだ。漸く、奴と対峙出来る」
遠慮無く真横に座る乾月の表情を横目で確認するが
彼はずっと笑みを浮かべている様だった。
「師匠ってさ、本当に恐怖を表に出さないよな。
恐怖心ってのを知らない人間みたいに」
「多少は知ってるさ。でも今は別に恐怖でも何でもない」
「それが大したもんだって言いたいんだが」
「私なんて大したもんじゃないよ。
それなら弓ちゃんの方がずっと凄いんじゃない?」
「まぁね」
月夜が優しく日本庭園を照らしている。
乾月と鳴神、二人の影も静かに室内へと延びていた。
* * * * * *
翌日。蓮杖家の客間には
朔耶、十六夜、弓、乾月、鳴神の他に
寿星、繊、神楽と【妖刀】の意識体達が姿を見せていた。
「此処に揃ってもらった全員があの巻物を読破したと思う」
朔耶は開口一番にそう確認した。
先ずは其処から切り出さなければ話にならないからだ。
「あの巻物は十六夜の祖父、賀茂 礼惟が遺した物だ。
彼は千年前、この街を…都を或る存在の脅威から護る為に
特殊な結界を張り巡らせた」
「それが…【四神結界】って事ッスか?」
「そうだ。そして…【妖刀】は四神と密接な関係にある」
「あれ? だとすると…数が合わない事無いッスか?
【妖刀】は5本なのに…」
「【四神結界】の要は東西南北の四点と、その中央。計五点だ」
寿星の疑問に口を挟んだのは十六夜だった。
「北の玄武に【兼元】、東の青竜に【村雨】、
南の朱雀に【陽炎丸】、
西の白虎に【村正】。そして…中央に【虎徹】」
「一寸待て、十六夜。それって…」
「鳴神の思った通りじゃ。
それぞれ【妖刀】の安置場所に合致する」
「!!」
「【妖刀】の元来持つ力はそれぞれの神獣の力に比例している。
【妖刀遣い】はそれ故、神の力を行使しているとも言える」
十六夜は其処に居る全ての者の顔を
見渡しながら静かに語り出した。 |